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生きながらフリッカーに葬られ

Buried Alive In The Bogus


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『コズモポリス』 映画における殻としての車

  1. 2013/04/29(月) 09:40:22|
  2. 洋画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
20130106_190954.jpg

      昼間はストリートで、虚しいアメリカン・ドリームを待ちわび
      夜は 自殺機械に乗って栄光の殿堂を走りぬける
      クロームのホイールをはき ガソリンをつめ 九番高速で檻からとび出す
      そして ラインを外れて突っ走る
      ベイビー この町はおまえの背骨をはぎ取っちまうぜ
      それは死の罠 自滅の罠だ 若いうちに抜け出そうぜ
      おれたちのようなはぐれ者は 走るために生まれてきたんだから

                    ――ブルース・スプリングティーン“ボーン・トゥ・ラン”


 初めまして。はまりーと申します。
 当ブログでは、劇場公開作品を中心に、映画の感想をつらつらと書き連ねていきたいと思います。
 もっとも、ブログ主はシネフィルということばからもっとも遠い、映画勉強中のドシロウト。
 ときおり思い返したように過去作を振り返ったり、いまさらのように映画史の勉強を始めるようなことも
 あるかもしれません。
 難破船のようにふらふらとした航跡を遺すかも知れませんが、それでもなるべく毎日、こまめに更新して
 いきたいと思っています。よろしく御願いいたします。

 さて、当ブログ一発目で扱うネタはこちら。

 デビッド・クローネンバーグ 『コズモポリス』

 おそらくは現代からそう遠く離れてはいない時代のニューヨーク。
 若き投資家、エリック・パッカー(ロバート・パティンソン)は電子の要塞と化したリムジンの中に居座り、
 優秀なクルーを多数抱え、情報の海を泳いで信じられないほどの巨万の富を手に入れています。
 ところがちょっとした情報の読み間違いから、人民元の投資を失敗し、たった一日で彼は破滅へと落ちて
 いきます。エリックの転落の一日を、リムジンの中の視点から捉えたのがコズモポリスです。

 タイミング良く、というべきか悪く、というべきか、ニューヨークには大統領(プレジデント)が訪れています
 亡くなったスーフィー教徒の人気ラッパーの街頭葬儀が行われ、その上に金融危機が原因のデモまで始まって、
 街は大騒ぎです。

 当然、エリックの乗ったリムジンは、歩いた方が早いんじゃないかという遅さでニューヨークの街を
 横切っていきます。我々には、リムジンの窓越しに、この世界のありさまを眺める時間がたっぷりある
 わけです。浮浪者が騒ぎ、抗議のためにガソリンを被って火をつける人々がいる混乱した世界を。

 車の中に視点を限定し、そこから世界を描いた映画と云えば、なんと云っても『タクシードライバー』
 を思い出します。あれは青年トラヴィスの狂気までいきつく孤独がテーマでしたが、同時にタクシーの車窓から
 世界を切り取った、70年代後半のニューヨークの見事なタブローでありました。あの映画のネオンの輝きや
 街娼たちやポン引きたちのうろつく街の匂いの生々しさは、いまでも新鮮です。

 対するに『コズモポリス』ですが、サイバーパンク的な荒んだ未来像を描くこと、目新しい未来を描くことに、
 クローネンバーグはまるで興味がなかったようです。この世界が現在を描いた寓話だからかもしれませんし、
 御年70歳のクローネンバーグが、想像力に息切れを起こしているのもかもしれません。
 ディスコだかクラブだかしりませんが若者たちが踊り狂いレーザー光線が飛び交うあの場所の描き方
 そのどうでもよさげ感(笑)なんか、苦笑してしまいます。

 ですがこの映画、観ていてどうにも説明しがたい心地よさがあるのですよ。
 リムジンの中に舞台が限定されているからかもしれませんが、守られている感じと同時に自閉した、
 なんとも云えない背徳的な心地良さを感じてしまうのです。

 途中でその正体に気づいて、あっと声が出ました。
 これって、インターネットカフェでドリンクバーのコーラを飲みながらマンガを読んでるときの感覚だ、と。
 薄い壁一枚でぎりぎり世界と隔てられている、こころもとなさ。それと相反する頼もしさ。
 エリックの乗ったリムジンは鉄壁の要塞ではありません。デモ隊に揺らされただけでゆさゆさ振動しますし、
 ネズミのハリボテがぶつかると鈍い音まで響きます。ですがエリックは、そしてその折々の同乗者は、
 まったく世界の外には見向きもしないのです。薄い壁一枚隔てられた、羊水に満ちた世界で、偽りの
 安寧を貪るのです。
 これって、成人男子だったら簡単に蹴破れそうな、薄い壁に隔てられ、外部から遮断されたと信じ込み、
 ヘッドフォンでYoutubeの音楽を聞き、かたわらに積み上げたマンガを読み耽っているときのネットカフェ
 感覚そのものなのです。

 エリックの乗ったリムジンを、『ゴールドフィンガー』のアストンマーチンDB5と比べて
 みるという手もありますね。

 ジェームズ・ボンドの乗る、Qの秘密兵器満載のアストンマーチンは、云うまでもなく男の子の自我拡大欲求に
 答えるものです。あれは自閉した空間ではなく、拡大した自我なのですね。アストンマーチンに乗ったボンドは
 より強くなりますが、車を降りたとしても、ボンドは一人の(性的・社会的に)有能な男です。
 そこはネットカフェ空間のいじましい充足感とは無関係の、「大人の男」の世界なのです。

 わたしはコズモポリスのリムジンと比肩しうるのは、ヴェンダース『さすらい』のトラックだと思います。
sjff_01_img0233.jpg

 ヴェンダースの描く映写技師ブルーノは、成熟しきれない男です。
 彼は「まっとうな暮らし」に背をむけて、映画のフィルムをたっぷりと積んだトラックを転がし、街から街へと
 旅をしています。一箇所に定住しようとも、家族を持とうともしません。
 世界からははじきだされた男なのですが、そんな男を中心にし、そんな男の目線から描けてしまうのが
 映画というものの本当に面白いところです。
 自殺未遂の“カミカゼ”ランダーを拾い、ブルーノは二人で旅をします。
 さまざまな人がトラックに乗り込み、二人と出会い、また別れ、旅はつづきます。
 この、ひとつの乗り物の中に視点を固定し、そこから「世界」を描くという手法は、コズモポリスやタクシードライバー
 とまったく同じです。

 世界が、たったひとつの車窓からの視点で語り尽くせるほど簡単なものでないことをわたしたちは知っています。
 でも、その切り口で二時間なり三時間なりを貫き通すことが「映画」にはできるのです。結果どうなるか。
 車内=世界という映画(世にも恐ろしい映画だと思います)が、この世にはびこるということになります。

 その切り口がひどくいびつなことを観客は知っています。なにせ我々は「車の外にある世界」に生きているのです。
 ですが携帯の電源を切り、ネットカフェに入り浸る時間が、人によっては倒錯した充足感を与えるように、
 そんな映画がときにひどく現実に荒んだこころを癒してくれることがあるのです。

 いま、世界はそんな映画をこそ必要としているのかもしれません。
 折しも、わたしがこのコズモポリスを観たのは福岡のKBCシネマでしたが、ふたつしかスクリーンを持たない
 あの映画館で、もうひとつのスクリーンにかかっているのはレオス・カラックスの『ホーリー・モーターズ』でした。

 KBCシネマは昨日の夜、完全にリムジン専用映画館と化していたわけで、
 わたしはこの事実に面白みと哀しみを同時に感じざるを得ません。

 『ホーリー・モーターズ』がそうだったように、『コズモポリス』でも終盤、主人公はリムジンを降ります。
 羊水の安寧から抜けだし、肌を突き刺すひりひりとした現実の風に身をさらし、エリックが向かったのは
 刺客の待つスラムでした。

 そこからの展開は、カメラワーク、台詞回し、幕切れ含めて、見事です。
 エリックと刺客の、まるで噛み合っていない、闘犬が向かい合って自身を身食いしているような会話は凄まじい。
 個人的には、本作はクローネンバーグの最高傑作だと思っています。

 ネットカフェのドリンクバーは、何杯飲んでも無料です。
 マンガだって読み放題、ネットだってし放題。
 でもレジでお金を払い、ひさしぶりに見る陽光に目をしばたかせたとき。
 その時目の前に映る光景をこそ、わたしたちは現実と云うんじゃないでしょうかね?
 

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comment

ビフ タネンさん、ありがとうございます。

  1. 2013/04/30(火) 16:57:07 |
  2. URL |
  3. はまりー
  4. [ 編集 ]
初ブログでどきどきでしたが、コメントがついてうれしいです(笑)。
なるべく、毎日更新を目指して頑張っていこうと思っています。
よろしく御願いいたしますね!

開設おめでとうございます。

  1. 2013/04/29(月) 19:28:25 |
  2. URL |
  3. ビフ タネン
  4. [ 編集 ]
Twitterのビフでございます。
もう完璧な論旨展開、ネカフェとの相似を喝破されるあたり、いつもの痺れまくるはまりーさんですね、ファンとして、小まめに覗きに参ります。次回更新待ちきれません。

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