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パラノーマン ~搾取に失敗したエクスプロイテーション映画

  1. 2013/08/17(土) 22:43:35|
  2. 洋画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
main.jpg
『パラノーマン ブライスホローの謎』という映画の本質についてようやく理解できた。
あまりにも遅すぎる悟りだ。四月に劇場でこの映画を観てから、すでに四ヶ月が過ぎている。
一部好事家を除き、あまり評判にもならなかった作品なので、ざっと概要を説明したい。

タイトルにもあるブライスホローというのはアメリカの田舎町で、かなり露骨にマサチューセッツ州セイラムを
モデルとしている。有名な魔女裁判のあった街だ。この街に住むノーマン少年には秘密があった。
彼は幽霊と会話することができるのだ。そう、シックスセンスのコール少年のように。ある日、(ジョン・グッドマン
演じるところの)怪しげなおじさんがノーマンに警告を告げる。魔女の魂が悪霊を呼び起こし、街を滅ぼす。
ノーマン少年は街を救う為に、仲間たちとともに街の過去と秘密を探る旅に出かける――。

製作期間3年を掛けた、凝ったストップモーションアニメの秀作である。制作に3年もかけるなら、もっとメジャー
受けするネタをやればいいと思うのだが、シュヴァイクマイエルといい、ストップモーションアニメをやろうという
人たちにはなにやら変な業を背負っているようで、幽霊が見える少年というニッチなネタを扱っている。

恐らくは、そのニッチなネタがわざわいして、パラノーマンは日本ではヒット作とは成らなかった。
そう、わたしがずっと胸にひっかかっているのはそこなのだ。
これが自主製作映画で、実写ならばなにもいうまい。どんな題材を扱おうがそれは自由だ。
だがメイキングを観ればわかるが、商業ベースに乗る長尺のストップモーションアニメを作るというのは
凄まじい苦行なのだ。その労力に見合ったペイを得ようとは考えないものだろうか?
なんだって「幽霊が見える少年の冒険」なんていう、暗いネタを扱ったんだ?

そのタネが、昨晩、いきなり解けた。
物語開始早々、ノーマン少年の通学風景を描いた印象的なシーンがある。第三者視点から見ればノーマン少年は
静かな背景で独り言をつぶやく気持ちの悪い少年にしか見えない。だが彼の主観(丁寧に二つの視点で語り直して
ある)から見れば、ノーマン少年は顔なじみの幽霊たちに囲まれ、挨拶を交わし、軽口を叩き、実に賑やかだ。
このシーン、どこかで見たことがあると思っていたんですが、四ヶ月経ってやっとそ元が思いつきました。
これって『黒いジャガー』だ。
img_1422507_47188520_0.gif
ブラックスプロイテーションの元祖、黒いジャガーについてはかなり有名だと思いますが、それでもざっと概要を。
観客から搾取(エクスプロイテーション)するための金目当ての映画、その中には、特定の人種にむけた映画という
ものが存在します。ブラックスプロイテーションとは、ずばり、黒人観客のためだけに作られた映画。
主人公は黒人で、白人はやられ役。観客たる黒人をいい気分にして金を落とさせるために、「黒いジャガー」の
主役、リチャード・ラウンドトゥリーはかなりいい目を見ます。モテます。ぶっちゃけた話、黒人の女にも、白人の女にも
もてるのです。ですが重要なのはこれから先。2013年現在、もっともアップトゥデートされたブラックスプロイテーショ
ン、『ジャンゴ 繋がれざる者』には描かれることがなく、ジャンゴがヒロインにその主人公の姓を与えるというかたちで
敬意を表した『黒いジャガー』にのみ描かれた、ある重要な要素があります。
『黒いジャガー』の主人公、シャフトは、男にも女にも、白人にも黒人にもモテるのですよ。

わたしはこの一点に、真の黒人の苦渋が現れているように思えます。
『ジャンゴ 繋がれざる者』の白人をムチ打つ黒人、という図式は、やはり白人の発想なのかなと思うほどです。
アメリカにおける黒人ほどに長いほど、人間性を剥奪されて生きてきた人ならば、望むものはなによりもまず。
受容でしょう。

黒人たちは、ムチを持って白人に復讐するよりもまず先に、いろんな人たちに受け入れられたかったのです。
実際、黒いジャガーにおける主人公シャフトのモテっぷりは印象的です。
彼は探偵ですが、知性というよりも、身につけたストリートワイズで事件を解決していきます。
そしてその過程で、白人、黒人、男、女、ホワイトカラー、ブルーカラー問わず、誰もが彼に好意的なのです。

さぁ、だいぶ遠回りしました。ぐるっと回って、パラノーマンに戻りましょう。

ノーマン少年が幽霊たちに気軽に声をかけながら通学していくその風景。
その風景に、黒いジャガーの「モテるシャフト」の姿を二重写しにしたときに、この映画の謎は解けました。
これは、ある差別された人々にむけた、その人たちにむけた搾取映画(エクスプロイテーション)なのです。
どんな人種なのか。
オタク(ギーク)です。
パラノーマンは、オタクスプロイテーション映画としてこの世に生まれたのです。


その証拠のように、パラノーマンのメイキングでは、製作会社ライカの人々が自分のことをこう語ります。
http://www.youtube.com/watch?v=YweoNjdiPFE

「だいたいアーティストは変人ばかりだからね、フットボールの主将だった人はいない」
“変人”である自分たちを肯定するために、パラノーマンは「変わり者である主人公が受容される話」になりました。
ならざるを得なかったのです。
おそらくは、採算とか、計算とか、度外視で、制作者は「そういう物語」を作らざるを得なかったのだと思います。

パラノーマン ブライスホローの謎。
これは「変人」が「自分が受容される世界を描き、同じく変人から搾取することをもくろんだ」
エクスプロイテーション映画なのです。




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