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生きながらフリッカーに葬られ

Buried Alive In The Bogus


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ゼロ・グラビティ

  1. 2013/12/18(水) 00:26:44|
  2. 洋画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
「CQ、CQ、CQ、誰かぼくの声が聞こえますか」
「はい、聞こえていますよ」
「CQ、ありがとうございます。そちらはどこですか?」
「あなたからとても遠いところです」
「ぼくはいま部屋にひとりでいます。電熱ヒーターが一台あるだけでとても寒いです」
「きょうはとても寒かったですね。わたしはブランケットを膝にかけています。もう眠ろうかと思ったんですけど
布団を猫が占拠していて眠れないんです」
「ははは、猫には勝てませんね。でもとても幸せそうな感じです。眠いのに話していて大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。あなたと話している内に目が冴えてきました」
「それはうれしいです。あなたにいま見える風景を教えてもらえませんか」
「わたしはリクライニングチェアに腰掛けています。視線が上をむいているから、壁にかかったホッパーの
絵がよく見えます。どこかへむかう、蒸気船の絵です」
「絵はお好きですか」
「とくには。どこかへ行きたくなる気持ちをなだめるために飾っています。あなたは、いま?」
「ぼくは部屋にひとりでいます。ここには絵もなく、花を飾った花瓶もありません。目を慰めるものはなにも
ありません。窓を雪が叩いています。こんな夜には自分が世界でひとりきりになったような気がします」
「わたしがいますよ」
「あなたがそこにいて良かった」
「わたしたちは同じ星の上にいます」
「ええ」
「いつか会えますよ」
「会ってくれますか」
「いいですよ」
「そばに居てくれますか」
「もちろん」
「ずっとそばに居てくれますか」
「ええ」
「ぼくを二度と独りにはしないでくれますか」
「……」
「CQ、聞こえますか」
「……」
「聞こえますか」
「……」
「どこにいるかわからない、あなた、ぼくの声が届いていますか」
「……」
「届いていると信じて、話しかけてみます。ぼくはもう何年もこの部屋から外に出ていません。
ずっと椅子に座ったまま、自分とは関係のない他人の会話に耳を傾けていました。
ぼくの声が通じたのはあなたが初めてなんです」
「……」
「わたしたちは同じ星の上にいると貴女は云った。ぼくたちは重力という鎖でこの地上に結びつけられている。
それがぼくには苦痛で仕方がなかった。外に出るのが怖くて仕方がない。ずっと、ずっと、ぼくはこの星で
一人きりなような気がしていました」
「……」
「それでもいま、貴女が答えてくれた。この星の上に、ぼくの声を聞いてくれる誰かがいるとわかってしまった」
「……」
「ぼくは何も持っていない。そう思っていました。でも、違う。
外に出るのは怖い。どんな敵意や危険が待っているかも知れない。
でもそこには酸素がある。息を吸い込み、太陽の温かさを感じ、頬に触れる風の冷たさを感じることができる」
「……」
「それがいま、とてつもない幸運に思えるのです。ぼくは貴女から遠く離れた場所で独りぼっちだ。
でも重力がぼくが大地を踏みしめることを許してくれる。
ぼくが前に進むことを許してくれる。
それがどれだけの幸運か、いま感謝に胸が張り裂けそうです」
「……」
「いまから、ずっと締め切っていた部屋の窓を開けます。冷たい空気を吸ったら、ドアを開けます」
「……」
「貴女に会いにいくために。貴女がどこにいるかわからない。でも重力がある限り、ぼくたちは同じ大地の
上にいるはずなのだから。きっといつか会える、そんな気がしています。聞こえていますか?」
「……」
「聞こえていますか?」
「……」
「聞こえていますか?」
「……」
「あなたの声が聞ける場所まで、いまから歩いて行きます」
「……」
「通信を、終わります」

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